リストの中の某作品を描いてしまった挿絵
90年代のサイバー映画をランキング
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次は90年代ブームが来る。いや、もう私の中ではマイブームが来ている。というわけで、こんな興味深い記事を見つけてしまったからには、掲載作品を見ないわけには行かなかった。今回の記事は、元記事のリストに掲載されていた映画を可能な限り見てみた感想である。
ここでいう可能な限りとは、購入しなくてもレンタルとか配信で見られるという程度である。さすがに古い映画ばかりなのでVHSしか出ていなかったり、DVDにプレ値が付いていたりするため、見たことがない映画に大金を出すわけには行かないよ!と思ったのでそういう扱いである。違法な方法は検討しないこととする。
うちのブログの記事のスタンス
元記事はChrome に搭載されたGoogle翻訳 等でサクッと読んでいただくなどして、とりあえず私は元記事で紹介されていた映画がどこで見られるのか、そして私が映画を見てどう思ったかとか、そういうことをメインに記事にしていく。
あと、それだけでは味気ないので、元記事の「一言で言うと」の部分だけざっくりと紹介しておく。ここでは「一言で言うと」と意訳したが、元記事の"1337? Or sux0rz?"のことだ。1337とは、ハッカー 的にすごく良いという意味で使われている。sux0rzはその対義語だ。
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元記事の作者は「インターネットは都市か?」「ギブスンみを感じるか?」「過ぎてしまった未来の描写から悲惨さを感じるか?」など、作品の近未来サイバー具合をかなり細かくジャッジしているが、私はふわっと作品を紹介するにとどめておく。私は残念ながら元記事の作者ほどにはサイバーパンク に思い入れはなく、どっちかと言えばレトロ趣味に入れ込んでいる映画好きに過ぎないからである。私は過去に生きてるっぽいんだ、すまねえな…。
なので私は、いかにも90年代っぽい!という場面に注目し、風情を感じようとしている。いかにも90年代らしいファッションやガジェット、世相…そしてツルツルしたCG にどうしても熱い視線を注いでしまう。
見る前の約束:当時のCGについて
この記事を読んだあなたがもし、奇特にも掲載されている映画に興味を持ったとする。そして本編を見てみようと思ったなら、なんとしても覚えておいて頂きたいことがある。当時のCGの見方についてだ。
90年代のつやつやしたCGは、現実に撮影できなかった部分を補完する消極的な使い方ではなく、CGであることを見せるために使われていることが多いと思う。これは近年のZ級 サメ映画に出てくる、見るからにCGなサメとはわけが違う(多分)使い方だと私は主張したい。
90年代中頃までのCGはまだまだ質感がなく、不気味の谷 のど真ん中にいる。なので、機械が人間を必死に模倣したような不気味さを表現するには、いい感じなんだと思う。この記事で紹介する一部の映画では、そういう意図で使われた気味の悪いCGが見られる。
『トロン』(1982)のオーディオコメンタリーか特典映像で、製作者達が言っていたこういう話がある。当時のCGには技術的な制限がたくさんあったので、この制限によるローポリなCGに合うような世界観を作った結果がこれになったと。そしてその映像は、良くも悪くも誰も見たことのない世界を作り出したというわけだ。
この年代の映画のCGは、現代人からするとチープに見えるが、決してチープではない。けっこうお金がかかっているはずである。そして、当時最新の未熟な技術の攻めた使い方 だった。その辺の見方を覚えておかないと、古い映画を見ても「特撮がチープだった」という感想だけで終わることになるだろう。それはとても残念なことだと思う。
色々偉そうに書いてきたがまあ、このCGすごいじゃん!レトロ!わびさびを感じる !!とか思いながら見ていくくらいでちょうどいいと思う。私も雑に楽しんでいる。
ランキングの話
10.マインドワープ MINDWARP (1992)
コンピューターによって支配された近未来。システムから供給される夢を見ることで退屈な日々から逃避している人々の中で、ただ1人幻想を拒否したジュディはシステムオペレーターによって外界の荒野へと追放されてしまう。(下記リンク先より、投稿者のレビューから引用)
一言で言うと:クソ
この作品はDVD化されておらず、動画配信サービスにも無さそうだった。ブルース・キャンベル が出てるなら、きっと顔芸が楽しいに違いないと思ったので残念な気もするが、一言で言うとクソらしいのでヨシとする。
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9. ブレインスキャン BRAINSCAN (1994)
高校生マイケルは、現実よりリアルでスリルのあるゲーム「ブレインスキャン」を手に入れる。ゲームの中で彼はリアルな殺人を体験するが、その事件は現実に起こっていた。しかし、もうゲームはやめられない…。(下記リンク先より引用)
一言で言うと:クソ。ものすごくクソ。
この作品はDVDは出ているがレンタルはできないらしい。動画配信サービスにも無さそうだった。『ターミネーター2 』の子役として知られるエドワード・ファーロング が出てて超かわいい…とか言われているが、一言で言うとものすごくクソらしいのでまあ、ヨシとする。tsutaya.tsite.jp
8. ザ・インターネット THE NET (1995)
コンピュータ解析に関してはトップクラスというフリーの女性プログラマー 、アンジェラの元へ一枚のFDが送られてきた。そこにはネット上で偶然発見された国家機密のデータが保存されていたが、送り主は飛行機事故で死亡。バカンスでメキシコに出かけたアンジェラはそこでジャックと名乗る男性と出会い恋におちるが、彼の目的は彼女の命とディスクだった。何とか追跡を振り切って帰国したアンジェラは自分自身の存在を証明するものがすべて消失している事を知る。(下記リンク先より引用)
一言で言うと:クソ!
この作品はツタヤディスカス なら見ることができる。宅配レンタルのみならず、ツタヤTVやiTunes などの配信サービスでも見ることができる。
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私としては、この作品がそこまでひどいとは思わない。個人的には、けっこう刺さる恐怖があるストーリーだったと思った。元記事の作者は、オタクと世間との繋がりについてのありがちな説教 が気に入らないのかもしれない。
この作品に登場するΠ (パイ)のことは、古い技術書か何かで読んだことがあった。アンジェラのもとに送られてきた出所不明のフロッピーディスク には、冗談みたいなアプリケーションが入っていた。このアプリを起動して特定の操作をすると、画面の端にΠの字が現れる。これをクリックすると、国の機密にアクセスできてしまうと。このフロッピーディスク は実は、さる秘密結社が構成員のために作ったハッキング用のツールだったという感じである。これは風情があるわー。
アンジェラは色々あって旅行先でバッグを盗まれ、他人のIDを持って身一つで帰国することになった。そして帰ってきてみると、家が勝手に売りに出されている。そして自分の過去は捏造され、犯罪歴があることになっていた。こんなのおかしい!と主張するのだが、本来の身元を証明してくれる人が、周囲に誰もいなかったことに気がつく。近所付き合いはなく、友達もいない。職場はずっとリモートワークだったのだが、なんか今は自分と同姓同名の知らない人が働いていることになっている。えっ、怖い。普通に怖い。私も最近すっかり出不精で、全然友達付き合いができてない気がしてきた。ヤバいかもしれん。私は不安になった。
アンジェラの危機的すぎる状況は更に続く。老人ホームに入所している母親は認知症 で、娘のことも思い出せない。父親は行方不明。今、頼りになるのはチャット仲間と、数年ぶりに再会した元カレだけ…。ここまで設定が出揃ってしまうと、エンディングを察することができる気がした。ベタだな〜!と思ったのだが、意外と私の予想は外れた。えっ?って感じの終わり方だった。
入学してからずっとオンライン授業で、一度も大学に行ったことがない大学生の話がニュースに出てきたきたりするコロナ禍のこのご時世。今こそ、この作品のリメイクが作られるべきなのでは…?と私は思ってみたりしたが、要するにそういう続編が2006年にすでに作られていた。考えることは皆同じだったか…!
あと、サンドラ・ブロック のハイレグ水着はとても90年代みがあって、風情がある。そういうところは悪くないと思った。
7. バーチャル・ウォーズ THE LAWNMOWER MAN (1992)
西暦2001年。脳の活性化を研究しているアンジェロ博士は、新たな実験の被験者を探していた。そんなある日、知的発達障害 を持ったジョーブと出会う。彼は庭師の芝刈りを手伝う心優しい青年であったが、世話をしてもらっている教会の牧師からは日常的な虐待を受けていた。博士はコンピュータを使ったバーチャル空間を用いて、ジョーブの脳を活性化しようと実験を施したとところ、ジョーブは恐ろしい力を手に入れてしまう。(下記リンク先より引用)
一言で言うと:あなたが映画に何を求めているかによる。ピアース・ブロスナン がサイバー化の餌食になるところを見たいか?この映画はそういう機会にしかならないかもしれない。
この作品はDVD化されていない。同じタイトルの映画が数本あるが、この作品とは違うものだ。続編も3作目まであり、それもVHSにはなっているのだが、DVD化はされていない。本国で発売された北米版BDを売っているサイトもあるが、海外製のBDにはリージョンが設定されている。ワンチャンいけるかと思ったが、やっぱ見るのは難しそうである。
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この作品はどうやらスーパーファミコン のソフトの映画で、スティーブン・キング が原作を書いているという。しかし、原作とは違いすぎていて、どっちかと言えば「アルジャーノンに花束を 」に近い内容だといえるとのこと。
The Lawnmower Man (Trailer)
ピアース・ブロスナン といえば、『007/ゴールデンアイ 』(1995)のジェームス・ボンド である。この作品のCGはニンテンドー64 のあのゲーム*1 っぽくてとても風情がある。予告編を見ただけでも、こういうのが見たかったんだよ!って感じがした。今後本当に90年代ブームが起こって、当時のツルツルしたCGが注目されるようなことがあった時には、円盤化されるかもしれない。されてほしいなぁ。
6. バーチュオシティ VIRTUOSITY (1995)
1999年、ロサンゼルス。今後起こり得る凶悪犯罪に備え、合衆国政府は新たなる組織LETEC(警察技術研究所)を創設。あらゆる犯罪者のデータをコンピュータにインプットし、それをバーチャル・リアリティの世界で擬人化し、一犯罪者の行動パターンの分析と撃退法を研究するというシミュレータ装置を完成させた。まだ実験段階だったため被験者には囚人を用いていたが、そんな中、歴史上の凶悪犯罪者187人のデータをインプットしたシド6.7が現実世界へ逃げだしてしまう……。(下記リンク先より引用)
一言で言うと:クソ、ただしラッセル・クロウ のレイヴのシーンが超素晴らしいのでそこは除く
この作品は、ツタヤディスカス の宅配レンタルなら見ることができる。ちなみに、この作品は2020年に神奈川の地上波ローカル局 で放送された。つまり、まだエアチェック できる可能性がある映画ではある。*2 movie-tsutaya.tsite.jp
監督はブレッド・レナード。前述の『バーチャル・ウォーズ』の監督でもある。
この作品は、ポール・ヴァーホーヴェン 作品の影響をかなり受けていると思った。要するに、確信犯的なB級SFである。『ロボコップ 』(1987)や『トータル・リコール 』(1990)の悪趣味シーンを見てフハハ、こやつめ とか思えるような人であれば、かなり楽しめると思う。むしろあれで笑えるような人以外には向いていないんだろうな〜と思いつつ、私はブルーレイを買いました。
この作品の強みは、なんと言ってもCGがイケてることだ。CGと実写が歪に融合する画面が妙に魅力的だし、そんな場面が大盤振る舞いだ。この映画のCGは、シミュレーションによって作られたバーチャル世界の歪さを表現する際に使われている。あまりにもアシッドすぎて「熱でうなされた時に見た夢みたい」とか言われるレベルのシーンもある。こんな感じで。
この作品は仕上げが丁寧なのだが、設定が雑なところが残念である。SF設定の内容的にはけっこう先の未来でしか実現しなさそうなのに、1999年が舞台というので驚いてしまった。多分、背景の街の描写を安く上げるために、4年後の未来という設定になっているんだろうな…。まあ細かいことはさておき、ぴちぴちのデンゼル・ワシントン と、すごい顔芸を見せるラッセル・クロウ の頑張りを見てほしい。
元記事はレイヴのシーンが素晴らしいと書いているが、確かにこのレイヴ会場は90年代後半の流行を取り入れた最先端な雰囲気だ。一方、集まっているパリピ たちのファッションは90年代前半に流行ったテキスタイルと色使いで、スタッフの女性達とのテイストの違いが際立つ。このあたりに95年という時代が感じられて、とっても風情がある。
実在のシリアルキラー への言及も、当時の殺人鬼ブームを感じられて味わい深い。『カン・フューリー』(2016)みたいな超90年代映画 が作られたら、こんな感じになるんじゃないかな?というレベルで雑に楽しい作品だった。
5.イグジステンズ EXISTENZ (1999)
脊髄に穴をあけ、そこにバイオケーブルを接続して楽しむバーチャルリアリティ ゲーム。その最新ゲームをめぐり、天才ゲームデザイナーと反ゲーム主義者たちとの闘いが繰り広げられる。クローネンバーグ独特の、奇妙かつダークなビジュアルが満載。究極の体感ゲーム 「イグジステンズ 」の発表会で、女性ゲームデザイナーが狙撃された。彼女は会場にいた男性と、その陰謀を暴こうとするが・・・。(下記リンク先より引用)
一言で言うと:私はちょっと恐怖を覚えながら、素晴らしいと言うだろう。興味深い映画である。
この作品はツタヤディスカス の宅配レンタルなら見ることができる。movie-tsutaya.tsite.jp
この映画のジャンルは、主にホラーである。スカッと爽快なホラーじゃなくて、新しい怖さを追求しているタイプの、である。なんせデヴィッド・クローネンバーグ 監督が脚本も書いている。この人もサイバー映画を撮っていたのか!と思って軽い気持ちで見てみたら、例によって生々しいゴア特撮 に溢れた作品であった。ジュード・ロウ が、クローネンバーグ世界に蹂躙されている…。
まず、パッケージの画像を良く見てほしい。赤い寝具のベッドに横たわる男女。へその緒のようなコードの先には、皮膚に包まれた内臓のような装置が置かれている。これが、ゲーム用の装置・ゲームポッドだ。コードの先端は、へその反対側の背中に開けた穴・バイオポートに差し込んで使うのだが、この場面の時点でかなりヤバい。差し込む前にコードの先端をねぶって いるシーンは、びっくりとかいうレベルじゃない嫌悪感を覚えた。
これは特撮…!特撮だから…!!と思って必死に耐えていくのだが、まあすごい場面が続く。ミュータント両生類の内臓をさばく工場や養殖場 、それを料理して食べる中華料理店のシーンもある。とにかく、自分にどの程度のゴア耐性があるか、この映画を見れば見極められると思った。普通の血みどろスプラッタ映画 がかわいく見えるよこれ!!!
見終わった後に放心状態になる人もいるだろう。私もエンドロールの最後に「この映画ではいかなる動物も傷つけていません」の表示があることを確かめる以外に、何も考えられなかった。その辺のウシガエル を捕まえてきて使ってるのかと思ったら…そうなんですか…。
クローネンバーグ監督は、生々しい特撮にめちゃくちゃ力を入れている人だ。そのため、まさかこんなことしないよな…やらないよな!!??チクショウ!!やりやがった!!! という、ある意味予想通りの展開が連発する。ストーリー自体は、先の予想がつかない怖さが最初から最後まで続くというのにだ!ホラー耐性があったとしても、この作品の仕掛けの都合により、やはり最後には放心状態になると思う。何一つ安定した要素がない、不安がすごいのだ。最後まで見れば設定に納得はいくんだけど…納得できるんだけどさぁ…!!!
そんな感じで私にはちょっと、これがサイバー映画なのかどうかという話までする余裕がなかった。『
スキャナーズ 』(1980)や『
ヴィデオドローム 』(
1984 )でやってきた特撮が!めちゃくちゃスケールアップしとるッ!!!というショッキングさに圧倒され、私はそのことばっかり考えてしまった。恐ろしい作品である。
4. JM JOHNNY MNEMONIC (1995)
電子化が極限にまで進んだ近未来。特定の情報を脳に埋めこまれたチップに記憶させる“情報の運び屋”ジョニーは北京である情報を記憶するが、それは全人類の命運を賭けるものだった……。(下記リンク先より引用)
一言で言うと:本当に深く、素晴らしい。
この作品は、ツタヤディスカス の宅配レンタルなら見ることができる。
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ウィリアム・ギブスン の小説が原作の映画だが、この分かりづらい邦題のせいで、私も最近までその存在を知らなかった。
この映画の脚本は、ギブスン本人が書いている。それってつまり、正統なサイバーパンク ってことだ!裏の仕事を表すラン(run)という言葉が使われていたりして、なんとなく本格的な感じがする。ちなみにこの作品の舞台は、2021年という設定である。今年じゃん!
「サイバーパンク 2077」にキアヌが登場したことで、この作品がちょっと注目されているそうである。早速こんな記事が出ていたが、要するにこの映画は手放しで褒められるようなクオリティではない。しかし、良いところは良い映画だ。
wired.jp
この作品の魅力は、なんと言ってもキアヌ・リーヴス である。髪型とスーツのせいなのか、個人的にはキアヌ史上最高の男前度で出演していると思った。
脇役も良い。狂った修道士のような殺し屋はドルフ・ラングレン 。エクスペンダブルズの頭がおかしい人だ!この人がかなり怖い。ジョニィに仕事を斡旋したフィクサー はウド・キア 。『アイアン・スカイ 』(2012)の月面総統がこんなところに出てたとは。そして、ヤクザの親分役はなんとビートたけし !!この人がいることで、空気感が変わる。『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)に唐突に出てきたような気がしていたけど、こういう縁があったのか!すごいよ、このキャスティング。
あと、水槽に入ったサイボーグなイルカも出てくる。イルカですよイルカ!!すごい!かっこいい!!上の記事で「キアヌよりイルカのほうが表情豊か 」とか言われてるけどな!
この作品、CGは良いんだけどアナログ特撮がヤバいと思った。最初のほうに登場する北京の夜景はミニチュアで作られているのだが、あまりにも…素朴である。冒頭ではあんなことを書いたのだが、このミニチュアや、後の場面のミニチュアと実写が合成された場面の仕上げが荒すぎて、そこがやたらマイナスイメージとしてこびりついてしまった。爆発シーンに力を入れすぎて、他のアナログ特撮が雑になったのか…?とか考えてしまう。
シド・ミード がコンサルタント として参加しているだけあって、要所要所の設定や美術はとてもかっこいい。しかしアクションシーンが微妙だったりして、なんだか全体的にぎこちないところが目についてしまう。この粗さを、キアヌのかっこよさで押し切っているような感じもしなくはない。
レトロ趣味を持つものとしては、ニューアーク に来た時の飛行機がコンコルド だったことに大興奮してしまった。もうとっくに引退してしまったコンコルド …。95年当時はまだ現役だったのか。
3. サイバーネット HACKERS(1995)
デイドは、13歳のときにウォール街 のコンピューターに侵入して破壊、FBI のブラック・リストに乗る。18歳になった彼は、キーボードに触れる許可をもらい、高校生活をエンジョイしていた。だが、ハッカー ・キングと呼ばれる男にはめられ、犯罪の片棒を担がされてしまう。デイドは世界中のネット仲間を集め、反撃に転じる。(下記リンク先より引用)
一言で言うと:この映画は、ハッキングは馬鹿馬鹿しくもクソほど楽しいという前提をよく分かっている。なので素晴らしいといえる
この作品は、ツタヤディスカス の宅配レンタルなら見ることができる。
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ストーリーは、FBIが家に突入してきて8歳の主人公デイドが逮捕される場面から始まる。ハッキングは犯罪!逮捕されたらすごい額の賠償金を払わされるからな!! という大事なことを、最初に分からせてくれるのだ。しかし10年後。デイドは性懲りもなくハッカー 仲間たちとチームを作り、公衆電話の前にたむろってハッキングに精を出し、サイバー犯罪を取り締まる刑事に嫌がらせをして遊ぶのだった。この辺が、元記事がいっている馬鹿馬鹿しい楽しさだろう。教育的なんだけど、ちゃんと若者目線な映画である。
元記事のサムネイル画像にいる変な二人組は、この作品に登場するパフォーマー のレーザー&ブレードで、この二人は1337なハッカー でもあるという。こういうスラング が実際に使用されるのは、このリストの映画の中では多分これだけである。
インターネットとコンピューターの中の世界は、実写のようなCGのような不思議な映像で表現される。『トロン』のようなコンピューターの中の都市が、90年代後半からゼロ年代 に流行ったグラフィックで見ることができるような感じだ。そういえばこの年代、外側が透明のプラスチックで、中身が透けて見えているガジェットが流行ったんだよなぁ。そんなことを考え、ちょっと風情を感じた。
使用されている音楽はオービタル、アンダーワールド 、プロディジー 、マッシヴ・アタック など。90年代に活躍し、ゼロ年代 にベスト盤を出してそれを私が買って聴いていたような英国のアーティストたちによるものだ。90年代のJポップって妙にシャカついてたよね、ハハハ~ とか思っていたら、アンダーワールド もこういう場所で聴くとすごくシャカついて聴こえることに気が付き、私はびっくりした。
この映画にはアンジェリーナ・ジョリー がヒロインとして出演しているが、そのファッションはなるほどゼロ年代 基準で見るととてもおしゃれである。つまり、今見るとメイクがちょっとキツい。その辺にとても風情を感じる。そして、飛行機のシーンでPAN AM が出てきたところも90年代らしくて良いな…と思った。個人的には、ゼロ年代 の空気を感じて恥ずかしくなるような、むずがゆい映画だった。いやあのなんというか、90年代後半の流行にフォーカスしているからそういう感想にならざるを得ないの!
やっぱりさあ、当時最先端でクールだったカルチャーを20年以上経った後に見返すと、めちゃくちゃダサいんですよ。90年代も前半と後半でガラッと服や髪型のトレンドが変わるけど、その後半のトレンドというのがゼロ年代 前半の空気を感じさせてダッセぇ!!って思わせてしまうんじゃろうな…。30年前の流行はリバイバル するけど、20年前の流行は常にダサい 。そのダサさと、一周回ってアリだな…という感覚が、『サイバーネット』には溢れていると私は思った。
そんなわけなので、アラサー世代でこの作品をまだ見ていない人は、来たるべき90年代ブームと超90年代映画に備えて、ぜひ今のうちに見て復習しておくべきだ。そして、ダッセぇ!!と思ったシーンについて語り合おう…。
2. 13F THIRTEENTH FLOOR (1999)
コンピュータ・ソフトの開発者ホールは、ヴァーチャル・リアリティの技術を使ってコンピュータ内に1937年のロサンゼルスを再現しようとしていた。だが上司が何者かに殺される事件が起こり、ホールが容疑者となってしまった。アリバイが無いどころか、犯行時間の記憶自体失っているホールは、突然の事態にパニックとなる。やがて彼は、研究の過程で1937年の仮想世界と現実世界を行き来していたことを知る。その鍵を握るのは“13階”……。(下記リンク先より引用)
一言で言うと:驚くべき素晴らしさだ!この作品は、この映画の中で最もノワール な作品であり、『ダ―クシティ』と『マトリックス 』が無ければもっとヒットしていただろう。
この作品は、けっこう色々なサービスで見ることができる。ツタヤでは発掘良品シリーズでDVDが出ている*3 ため、うちの近所のツタヤ店舗でもレンタルすることができた。しかも、2020年末に見た時には、ポップつきでSFコーナーの目立つところにディスプレイされていた。これは…これは多分あれだよ。再評価というやつだ!多分!
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ローランド・エメリッヒ が製作に関わっており、ネームバリューがあるようには見える。しかし、元記事で見るまで私はこの作品のことを全然知らなかった。
この作品は「我思う、故に我あり」という言葉で始まる。ネタバレになるので詳しくは言えないが、要するに『ダークシティ 』(1998)と『マトリックス 』とネタが被っている。しかも1999年に『マトリックス 』より後に公開された。なんという巡り合わせだ。そのせいで、先行する2作品抜きでは語れない映画になってしまったとのこと。確かに、『ダークシティ 』とはレトロな雰囲気がメッチャ被ってる。設定も『マトリックス 』と被ってる!こんな不運な名作があったんか!!
本棚から発掘したツタヤの「シネマハンドブック2012」より。私はこの映画のことをスルーしていた。9年間も…
『マトリックス 』は、戦いだ!反乱だ!って感じのロックな映画だったと思う。でも『13F』は『マトリックス 』みたいな派手な視覚効果もなく、すごいアクションもなく…って地味な感じがするわけである。バーチャル世界っていうのも、1937年のセピア色のロサンゼルスだしな。私はかなり好きな雰囲気なんだけど、こんな相手と比較されてしまったら、そういう設定が地味で、取るに足らないように聞こえるわな…。
しかし『マトリックス 』との明確な違いがある。ネタへのフォーカスの仕方だ。劇中の台詞で表すなら、『13F』は「哀れな魂が凍りつくような」瞬間をストーリーの核にすることに力を注いでいると思った。つまり、このリストの作品の中ではトップクラスのエモさを持っているということだ。残念ながら、私にはこの良さをうまく語ることができない。なのでぜひ見てください…!
ニューヨークの会社でしがないコンピュータプログラマー として働くトマス・アンダーソンには、裏世界の凄腕ハッカー “ネオ”というもうひとつの顔があった。ある日、“ネオ”はディスプレイに現れた不思議なメッセージに導かれるまま、謎の美女トリニティと出会う。そして彼女の手引きによってある人物と接見することになった……。(下記リンク先より引用)
一言で言うと:クソな部分などない。
この作品は、だいたいどのサービスでも見ることができる。どこのレンタル屋にも円盤が置いてあるだろうし、配信でも見られる。
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1999年の超ヒット作であり、私はこのリストの中では唯一リアルタイムで映画館に見に行った。続編も3作目まで作られた。私もVHSで録画して何回も見た。
『マトリックス 』の特撮は画期的だった。弾丸を避けながらスローモーションで反り返るキアヌ・リーヴス の周りを視点が動いていく「マシンガン撮影 」の場面が、当時めちゃくちゃ流行った。世間の興奮は相当なものだったし、私もこの映画のパンフレットを読んで初めてサイバーパンク という言葉を知って熱狂したことを覚えている。そして、みんなで反り返って遊んだ。
Rooftop Showdown - The Matrix (7/9) Movie CLIP (1999) HD
『マトリックス 』のことをCMか何かで知ったとき、父に頼んで公式ホームページを見せて貰ったことを覚えている。ダイヤルアップ接続して画面に現れたのは、「赤い薬と青い薬」の画像だった。この世界は実は、コンピューターが見せている夢なのかもしれない…そんな想像を膨らませる粋な演出だったなぁ、と思う。
コロンバイン事件があった時、犯人の二人組の高校生は『マトリックス 』のネオみたいにトレンチコートを着ていたことから、映画の悪影響が云々なんていうことまでアメリ カのメディアでは言われていた…という報道を見た記憶がある。『マトリックス 』はエンディングにマリリン・マンソン の曲が流れる。犯人たちは実際にはKMFDM*4 のファンだったらしいんだけど、なぜか代わりにマンソンが大バッシングされたこともあった。個人的にはこの映画がきっかけでマンソンの曲と名前を知ることになったので、ある意味では人生を変えた映画だったと思う。あの頃のマンソンはアメリ カの諸悪の根源 とか言われてたけど、いやぁ90年代ってなかなかエキサイティングな時代でしたね…。
そんな感じで視覚効果がすごい、ストーリーもすごい、話題性もすごいと3拍子揃った超大作だった。同年には『スター・ウォーズ エピソードI/ファントム・メナス 』が公開され、この2本が1999年現在の最高峰のCGを見せてくれるとされていた。そりゃあ他の作品が霞んで見えるわい! と思ってしまう。今見返すと、アクションシーンでかっこつけすぎじゃない…?と風情を感じてたりするんだけど、やっぱこれを1位にしないなんてあり得ないね!納得の1位だ。つい興奮して思い出話ばっかりしてしまったが、これが一時代を築いた映画なんだな…って感慨深くなってしてしまったんだ。
ところで監督のウォシャウスキー 兄弟は、知らない間に二人とも性転換して姉妹になっていた 。この話自体がすごくサイバーパンク してる感じがする。そして、そのラナ・ウォシャウスキー がこの作品のリメイクを作って今年公開する予定だそうだ。楽しみに待とう!
0. ストレンジ・デイズ /1999年12月31日 STRANGE DAYS (1995)
驚いたことに、このランキングにはシレッと0位が設定されている。
1999年12月30日。他人の体験を感じることのできるディスクを闇販売しているレニー(レイフ・ファインズ )のもとに、元恋人の娼婦フェイス(ジュリエット・ルイス )の友人が殺される瞬間を記録したディスクが届けられた。次はフェイスが危ないと察知した彼は、2000年を目前に控えて沸き返るおおみそか のロスの街へと急行する……。(下記リンク先より引用)
一言で言うと:これがリストのトップだけど、みんなはどう思った?私はこの映画が好きだし、この映画を再発見できて嬉しかった!
この作品は国内のどこの配信サービスでも見ることができず、DVDも廃盤になってプレ値がついている。最初はCDと同じパッケージでDVDが発売されたが、今よく見るあのパッケージで再発売されることはなかったというのか…。90年代後半の映画には、こういうことが起こるのか。知らなかった。
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一応ツタヤディスカス を調べてみたら、この作品のサウンド トラックCDならレンタルできる ことがわかった。強い、強すぎるぞツタヤディスカス …。
🎥 STRANGE DAYS (1995) | Full Movie Trailer | Classic Movie
この監督のキャスリン・ビグロー という人は、ジェームス・キャメロン の元嫁だそうだ。「ハート・ロッカー 」(2008)ではアカデミー賞作品賞 と監督賞を受賞。「ゼロ・ダーク・サーティ 」(2012) はアカデミー賞作品賞 にノミネートされた。ということで、つまり私にはあまり縁がない系の作品で有名な人だった。この人の作品で私が唯一見たいと思えるのが『ストレンジ・デイズ 』って感じだな…。ボンクラですみません。
『マトリックス 』のパンフレットを読み返してみると、先行するサイバーパンク 作品としてこの作品の名前が『JM』等と一緒に掲載されていた。あらすじを読んだ感じだけでも、『ストレンジ・デイズ 』には世紀末の倦怠感や、21世紀への期待のような何かが結集しているんだろうなーと思えた。そういう空気を切り取った作品って…絶対にエモいやつじゃん。見たいんだけど…無理はせんほうがええな…。
元記事の評価について
元記事の作者は自分で「このランキングは疑わしい」と書いているが、確かに偏っている。押井守 の『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 』(1995)も立派な90年代のサイバー映画じゃろと思うが、元記事の作者はその辺は無視している。まあ、そのおかげで私は知らない映画を知ることができたので良かった良かった…ということにしておく。実写の映画に限定しているのかもしれないし。
個人的には、このランキングの順位には異議はない。唯一円盤を買っちゃった『バーチュオシティ 』は確かに好きだけど、このくらいの順位で良いと思った。『ザ・インターネット』も悪くない作品だが、95年らしさと95年ではあり得ない設定が混在してたりして微妙だし、そもそもオタク受けを狙った設定じゃないしな。『イグジステンズ 』は味付けが濃すぎて、私にはうまく評価できなさそうなのでこれでいいです。
リアリティ、役者の演技、画面の映え、そして謎の魅力等々、色々な評価軸があるが、『マトリックス 』が1位で0位が『ストレンジ・デイズ 』になっているのはなんとなく納得だ。『ストレンジ・デイズ 』は目立つ作品ではないんだろうけど、90年代らしさの最たるものが詰まっているんだろうな。そういうの、何となく伝わったぜ。見れてないけど。
映画をどうしても見たいとき
このリストには、現在配信もレンタルもできない映画が4本含まれている。しかし、どうしても見てえ。そういう時は、VPN を使用してロケーションを米国にした上でNetflix から見ると良いのよ、という話がある。
要するに、日本語字幕や吹き替えはない!英語で見ろ!ということだ。うん…まあ、見れないことはない。『ストレンジ・デイズ 』は日本非対応だけどNetflix や米Amazonプライム にはあったので、装備とリスニング力を鍛えてから挑戦するのが良いんだと思う。英語の字幕さえあれば、何とかなる気もするし。まあ…うん…そのうちやってみるかもしれない。
あとは、スカパーやWOWOW で放送されないかな〜とか、リバイバル ブームに乗って再評価されて復活上映されないかなー…とか願うくらいしかないだろう。違法な方法は推奨しない。 よろしくお願いします。
宅配レンタルは強し
そんな感じで、すっかりツタヤディスカス 宅配レンタルの宣伝みたいな記事になってしまった。実際私は元記事を読んだことがきっかけで、ツタヤディスカス 宅配レンタルのサブスクリプション を契約してしまった。恐るべし、ツタヤ。
どうしてこうツタヤが強く見えるかというと、多分契約期間の問題だと思う。配信されている動画作品には契約期間があり、作品ページには何年何月まで販売(配信)という期限が記載されている。なので、配信サービス会社が作品の販売会社と決めた契約期間が過ぎてしまうと、その作品は見られなくなる。こうして、古い作品が見られなくなっていく。
しかし物理のメディアとなると、一度生産されてツタヤのものになってしまえば、メディアが物理的にダメになるまでは商品として流通するのだろう。ツタヤの発掘良品シリーズはその辺をよく分かった上で、良い作品が時代の流れの中で埋もれていかないようにしてくれているんだと思う。そして私のような客が、ポップに騙されて 良いんだか微妙なんだか分からない映画を何本も見てしまうというわけだ。
しかしツタヤディスカス には無いけどiTunes にはある映画も、あるっちゃある。iTunes はサブスクリプション サービスに入らなくても映画をレンタルをすることができるので、そういう作品は都度課金して見ればいいやと思う。
動画のサブスクリプション サービスに入るときは、品ぞろえ重点で選ぶことが大事だということがよく分かった。VPN がどうこうの話になってくると、ネトフリとツタヤディスカス のどっちが強いのか、もう分からないしな。
さいごに
この「サイバー映画」というざっくりとした区切りのせいで、オタク向け、若者向け、インターネットをよく知らない人向け 、ボンクラ向け、アート路線等々、色んな作品が集まったリストだったと思う。元記事のおかげで、ボーッと生きていたら絶対見なさそうな作品を見ることができて楽しかった。サントラも色々聴いて90年代みをたくさん摂取でき、充実した時間を過ごすことがきできた。監督の過去作も色々見た。ブレット・レナードの『デッド・ホスピタル ゾンビ製造人体実験』(1987)とかな!*5
あと、一言で「これだ!」というキャッチコピーを書けない映画は、30年後まで生き残れないんだな…とか考え、世知辛さを感じてしまった。『バーチュオシティ 』なんか「バーチャル殺人鬼が現実世界に逃げ出した!」って書けば十分伝わる内容だから、まだテレビ欄でも戦えるスペックなんだな…とか思った。
時代に閉塞感が漂う時、懐古趣味が流行るそうである。ステイホームしながら現実逃避する分には、昔の映画が最高だ。それにしても『JM』の、2021年にパンデミック が起こってる設定…。映画の中くらい感染対策のことは忘れさせてほしかった。ほんとにな…。